column 医院コラム

歯周病と新型コロナウイルスの重症化

2020.05.07

新型コロナウイルスの重症化のメカニズムはサイトカインストームという免疫暴走によることが最近の研究で明らかになってきました。重症肺炎は自分を守はずの免疫が過剰に働くことで起きている可能性が判明しました。
この、サイトカインストームというのは、簡単に説明すると免疫が暴走した状態です。本来ならば、ウイルスが体に侵入すると私たちの体はこれを排除するために免疫機構が一生懸命に働いてくれます。しかし、今回の新型ウイルスに感染すると打ち負かそうとするばかりに頑張りすぎて炎症が広がり重篤化しています。
この時にインターロイキン6(IL-6)という炎症によって分泌されるタンパク質が過剰に分泌されます。このIL-6は免疫細胞にウイルス感染した細胞に攻撃するように指令を出しますが、正常な細胞もやっつけてしまいます。死亡した患者さんの血液中のIL-6が高濃度検出されたとの報告がありました。
このIL-6は歯周病によっても上昇します。歯周病菌の持つ毒素(LPS)もサイトカインストームを助長する可能性があるために歯肉を炎症のない状態を保つことが大切です。また、ウイルス性肺炎に続発するとされる細菌性肺炎を防止するためには歯周病治療が必須になります。

以前から口腔ケアを行うことで季節性インフルエンザのリスクが下がることが報告されています。また、東日本大震災でも避難所でご高齢の方々が歯磨きができなかったことにより誤嚥性肺炎でたくさんの命を失いました。ここで改めて徹底した口腔ケアが生命の維持に重要であることが言われました。
今回の新型コロナウイルス性肺炎も細菌性肺炎を抑えることで軽症になる可能性が言われてきています。このことを教訓に私たち歯科でできることは、徹底した口腔ケアと歯周病の治療の重要性と継続です
歯周病は20歳以上の国民の80パーセントが罹患していると言われています。しかし、日本人の歯科受診率は約50パーセントです。そのうち自分が歯周病であると自覚している人はもっと少ないと思います。コロナウイルスだけでなく歯周病は全身疾患に繋がる慢性疾患とも言われています。現在、ワクチンや治療薬の開発が進められていますが実用化には時間がかかります。この機会に自分のお口の中の歯周病の状態やケアを見直してみてはいかがでしょうか?

当院では、感染予防対策として治療前に洗口液でうがいをお願いしています。これは、唾液中のウイルスを殺菌力のある洗口液で失活させています。この効果はずっと持続するものではないのですが治療中の短時間には有効です。
エアフローや超音波の歯石除去の使用はエアロゾルを発生するため極力控えさせていただいておりますが当院の歯科衛生士、歯科医師は炎症のある部位を見逃さず、磨きにくい箇所など丁寧に治療に務めて参ります。
手洗い、器具の滅菌、換気、待合室が密にならないようにアポイントの調整などスタッフ一同引き続き感染拡大防止に努めて参りますので安心してご来院ください。